「サンタ・サングレ/聖なる血」を元町映画館で観た

サンタ・サングレ/聖なる血 (アレハンドロ・ホドロフスキー 1989年)

ホドロフスキーについてはほぼ前知識なく見た。これが初めてのホドロフスキー体験であった。

1989年とホドロフスキーの中では新しいほうの映画なのだけれど、画質が悪くて、字幕のフォントのデジタル感と相まってDVDを上映してるような雰囲気が出ていて、面白かった。

ストーリー、というかオチはいかにもなホラーで、Yahoo!映画のあらすじでネタバレされてるくらい典型的。にもかかわらず、圧倒的カルト感でものすごかった。

まず主人公が初登場時全裸で木に登り、生魚をかじっていた。当然全裸なのでモザイクがかかっていて、なんだかお笑いのようだった。調べてみると演じたのは監督の息子らしい。親父がカルト映画監督だと大変だと思う。

回想に入って、主人公はサーカスの少年で、父親が太って偉そうな団長、母親が怪しい宗教の狂信者という謎の設定が出てくる。母親の宗教は最初楽しい音楽が流れて、小屋みたいな教会?が出てきたから愉快なやつかと思ったら、両腕を切断されたセーラー服の女の子が偶像というハードコアな宗教だった。などなど。過激な設定、場面が多かった。

感心したのは小人の象使いに本当の小人をキャスティングしているところ、あと主人公が収容されている施設に本当のダウン症のひとを多数登場させるところ。人権団体に文句を言われそうだなあと思ったけれど、やはり本物が出てくることの迫力というのは凄い。ダウン症のひとが集まって薬をキメてデブ女を買いに行くシーンがノリノリで面白かった。

小人の象使いが登場するのだけれど、象がわりとすぐに鼻から血を噴いて死んでしまって、象使いじゃなくなるのがかわいそうだった。サーカスの動物が死ぬシーンは、みなみ会館で観た「アンダーグラウンド」という映画を思い出した。カルト映画にはそういうシーンが多いのかもしれない。象が死ぬシーンが射精の暗喩として使われるのも酷い仕打ちだった。

重要な場面で登場人物にモザイクがかかることが多くて、そういうお笑いみたいな画面になってしまって、日本は不便だと思った。墓の中から蘇る白塗りの女たちが全裸だから股間にモザイクというのはどうなのか。

母親に心を支配されて母親の両手としてはたらく、というシーンはグロテスクであった。腕なしのひとの腕を演じる二人羽織はどのあたりが曲芸なのかちょっとわからなかったけれど。

非常に言葉で説明しにくく、言葉で説明することに意味はない映画なので、映画館で観られてよかったと思う。


Santa Sangre (1989) trailer - YouTube