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歌詞読解「広末涼子/MajiでKoiする5秒前」

97年発売の広末涼子のシングル曲、「MajiでKoiする5秒前」は、僕でも知っているくらい有名なJPOPだ。これを例にしてみよう。

作詞作曲が竹内まりやだからいかにも竹内まりやみたいな曲だとか、そのあたりは置いておく。全体を読解するのに必要な知識としては、タイトルが変な表記なのは当時の若者言葉「MK5(マジで切れる5秒前)」をもじったものであるというくらい。それもここではいらない。

全体としては女の子が彼に恋するラブソングなのだけれど、最初の二行がよくできた歌詞だと思う。

ボーダーのTシャツの 裾からのぞくおへそ

しかめ顔のママの背中 すり抜けてやって来た

 ぼーっと聴いていたら気づかないかもしれないけれど、この二行だけで主人公の女の子の年代がわかる。さて何歳でしょう。

 

まず一番の手がかりは「しかめ顔のママ」だ。あとを聴くとわかるけれど、これはデートの日の朝の場面だから、ママと同居しているということだ。ではなぜそのママは「しかめ顔」なのか。それは「裾からのぞくおへそ」に対して「しかめ顔」になっていると想像できる。つまり、おへそが見える服装がデートには過激すぎるということでママは同意しかねている。

一方、「ママの背中」については「すり抜けてやって来た」とあるから、ママの反対にあって露出を抑えないといけないというほど束縛もされていない。ママは顔をしかめるけれど、見て見ぬふりをするくらいには自立できる年頃のはずだ。

以上のことから、主人公は高校生くらいの女の子だということがわかる。大学生以上だと一人暮らしのイメージがあるから、ママと同居というのがそぐわない。たった二行ではっきりと描写できているのが良いと思う。

さらに良いことには、おへそを出すファッションが出来るという若い美しさを描写して、ママをなんとかごまかす女の子の魅力を同時に表現できている。

ママが背中を向けているというところが、特に良いと思う。主人公の女の子は「すり抜けて」と自分がごまかしていると思っているけれども、当然ママにはそんなことはばれていて、ママがわざとすり抜けさせているのだ。「しかめ顔のママの前を」でも文字数は同じだけど、全然違う。

あとに続く彼とのシーンでも、主人公の女の子を見守るような描写があり、黄金のアイドルソングという感じがする。メロディパターンが極端に少なく、全部繰り返しなのも面白い。

まずは簡単な歌詞でやってみたけれど、こんなふうに歌詞をじっくり考えてポップスを聴いてみるのも、面白いと思う。


広末涼子 『MajiでKoiする5秒前』 - YouTube