アルバイトと私3

 大学4年生になると研究室に所属し、実験が忙しく塾に顔を出しづらくなった。それでも週に2回は無理に研究室を早く切り上げて、塾で授業をさせてもらった。お給料は半分に減り、平日は自由な時間がほぼなくなってしまったが、授業は楽しかった。楽しいことをしてお金をもらえるのはありがたいものだ。大学院に入るときに、研究により本腰を入れないといけないので、アルバイトに来られそうにないと塾長に伝えた。塾長は親切な方なので、籍は残しておくから時間があればいつでも来て下さいと言ってくださった。

 そういう経緯で昨年の4月以来ほとんど顔も出せていなかった塾に、2014年から2015年の年末年始に冬期講習のお誘いをいただいた。ちょうど休みがとれたので、少しだけ授業を受け持った。久しぶりの授業は前と同じように面白く、生徒は相変わらず気を遣ってくれていた。少し受験生らしく根気がついていたようだ。半年以上会っていないのに、まるで先週まで毎週授業をしていたかのように話してくれて嬉しかった。

 これからは研究をさらに頑張る必要があり、就職活動も始まって忙しくなるだろう。そうなると塾にも行っていられない。お給料を受け取って、塾に行くのもこの冬期講習が最後になるかもしれないなと思い、センチメンタルな気分になってこの記事を書いた。時間の切り売りではなく、良い体験になったと思う。塾長の人柄と生徒達の親切心のおかげである。