「メロンパンナちゃんはいくつに見えますか」

 数ヶ月前から右目の視界が少しブレていて、気になるので医者に行ってきた。遠くでも近くでも同じくらいブレて不便であるし、何か重い病気の兆候であっても困るというわけだ。そういうのを気にするタイプだ。

 実は去年の夏頃に同じ症状が出ていて、そのときは町の名医と呼ばれる眼科に行って3時間くらいかけて視力検査をした結果、原因はよくわからないということで少しマシに見える眼鏡を作りなおしたのだ。裸眼ではブレるけれども、眼鏡をかけると少しブレる程度になって、文字が読みやすくなったので、まあしかたがないかと諦めていた。乱視用のコンタクトに変えたりもしたぞ。

 しかしその後、作りなおした眼鏡が合わなくなっていることに気づき、眼鏡を外して確かめてみると、なんとブレる症状が治っていたのだ。せっかく作りなおした眼鏡もコンタクトも意味が無い。ブレて見える時期が大学院入試のストレスが非常に大きくかかる時期だったのもあり、ストレスで見えなくなるもんかなと思っていた。

 それで今年また同じようにブレるようになり、しょうがなく別のこれまた名医と呼ばれる眼科にかかると、医大病院を紹介された。大げさで嫌だったが、原因が知りたかったのでおとなしく行ってきた。

 大学病院では本当にありとあらゆる測定器で眼球を調べ上げられた。ただ眼球を調べるだけなのにいろいろな測定器があるのだなあと感心した。子供の頃からそこそこ強い近視なので、気球が見える機械なんかには慣れていたが、見たこともないような機械で目の写真を撮ってもらったりした。何を撮ったのか教えて欲しいが、わかっていないひとに説明するのも大変なのだろう。

 眼筋麻痺が疑われていたので、クマのプーさんが先っちょについた棒を持って、プーさんを目だけで追いかけてくださいと言われて、片目を隠したり隠さなかったりしながら、キョロキョロさせられた。全年齢的にプーさんなのか。老若男女ディズニーである。

 こういう検査では遠くに視点を置くポイントが必要なようで、それは赤いランプであったり、ぬいぐるみであったり、絵であったりするのだが、今回はメロンパンナちゃんの顔であった。メロンパンナちゃんは僕が思っている以上に知名度の高いキャラクターであるらしい。「あのメロンパンナちゃんを見て下さい、メロンパンナちゃんはいくつに見えますか」という、精神科のような問いを繰り返された。レンズが外せる変な眼鏡をかけて片目を隠しながら、「メロンパンナちゃんはひとつに見えます」と元気に答えたが、症状との不一致があったようで、何度も聞き直された。何度見てもメロンパンナちゃんはひとつである。「メロンパンナちゃんはいくつに見えますか」と問われるたびにメロンパンナちゃんとは何なのかを考えて、笑い出しそうになってしまった。ここで笑うと本当に精神がおかしなひとにしか見えないので必死にこらえた。視力検査の列は4つあったが、他の列はすべて普通にアンパンマンだった。はめられたと思った。

 結局いろんな装置で調べた結果、角膜の表面がほんの少し歪んでいるようだということだった。病名は教えてもらえなかったが、おそらく円錐角膜やそれに類似する症状ではないかと思う。コンタクトレンズである程度矯正できるようだが、そこまでひどくないので今は様子見をする。

 メロンパンナちゃんはひとつである。メロンパンナちゃんが歌う「パンナのパンチ」という曲は名曲なので聴いたほうが良いと思う。


メロンパンナ パンナのパンチ - YouTube